仙台家庭裁判所石巻支部 昭和46年(家)42号 審判
〔主文〕本件申立を却下する。
審判に要した費用はすべて申立人らの平等負担とする。
〔理由〕一 申立人らは、本籍石巻市○○字○番○○△番地の△△被相続人栗原虎三(昭和三七年九月一〇日死亡)の遺産なりとして別紙目録記載の土地の分割を申立てた。
二 右土地が分割の対象となる遺産であるかどうかについて考える。各登記簿謄本の記載と相手方栗原健吾審問の結果とによれば、被相続人は死亡前の昭和三七年一月二三日相続人の一人である相手方栗原健吾と、右土地がいずれも農地であるところから、農地法第三条の規定する許可があつたとき所有権移転登記をする旨の停止条件付贈与契約を締結し、同年三月九日と同月一四日すべてについてその旨の仮登記を経て被相続人死亡後は農業後継者として栗原健吾においてこれを耕作し現在に至るも未だ右許可の申請もなく従て許可もないこと、被相続人は宅地建物をも既に同人に贈与しその移転登記を経ておつて他に分割すべき遺産として存在しないことが認められる。停止条件付所有権移転の仮登記ある農地を遺産として分割すべきかどうかは疑問がある。農地の所有権は、農地法第三条第一項による許可がなければ移転しないから、未だ許可のない以上なお遺産であるとする形式的な解釈と、許可がないとしても、許可の見込みが全然ない特別の事情がある(第三条第二項栗原健吾についてはこの事由はない)場合は別として、相続人は許可の申請を経て本登記をなすべき義務をも相続するから、結局は栗原健吾の所有に帰する訳で、遺留分減殺請求をしない限り遺産とはならないとする実質的な解釈とが考えられる。当裁判所は、後者の解釈を妥当と考えるので、遣留分減殺請求のない本件においては結局分割すべき遺産は存在しないものと認めざるを得ない。
三 よつて、本件申立は却下することとし、審判に要した費用は申立人らの平等負担とする。 (畠山郁郎)